井助のインスタグラムで継続してアップしている内容を、まめ知識としてこのサイトでもまとめてみました。
皆さんにも是非知って頂きたい、漆器や材料の漆についてのお話です。
1つ1つは短くまとめていますので、気軽にお楽しみください。
最新の内容を見たい、という方は、当店のインスタグラムへどうぞ。
漆器の使い方やお手入れについて
・漆器のお手入れ方法 洗い方は?
中性洗剤を使って柔らかいスポンジで洗います。
ゴシゴシ洗わず 優しく洗えばOK。
洗い終わったら 水気を布巾で 拭き取ります。
重箱の隅、椀の底等 水の溜まる場所は ちょっと気を付けて 拭きとりましょう。
・漆器のお手入れ方法 食洗器はOK?
漆器を洗う場合は 食洗機、乾燥機は 使わないで下さい。
その方が漆器は 長持ちします。
最近は食洗器対応の漆器も出てきていますが、強い洗浄力の洗剤や高温での乾燥は、漆器にとっては良くないです。
・漆器を使わない時は?(1)
漆は紫外線に弱いです。
収納するときは 直射日光の当たらない食器棚などに収納してください。
大切な漆器を 重ねて収納する場合、漆器と漆器の間に布や紙を挟みましょう。
擦れ合って傷付くのを 防げます。
・漆器を使わない時は?(2)
漆器は極度に乾燥した状態を嫌います。
乾燥が気になる場合、コップに水を入れて食器棚に置くと乾燥を防げます。
漆器を使って洗うと、水分を補給できます。
1年に最低1回でも使ってあげることが、一番良いお手入れ だったりします。
・冷蔵庫に入れて大丈夫?
冷蔵程度の温度なら冷蔵庫に入れて頂いても問題なし。
ただ、乾燥には注意。
また、水気のある食材の長期間の保存には、漆器は向きません。
漆器に盛り付け、 食事が始まるまで冷蔵庫に入れておく といった扱いがベター。
冷えた漆器も また楽し。
・お酢や油ものも大丈夫?
漆は元々、酸にもアルカリにも強い性質を持っています。
酢のものを盛り付けても 全く問題ありません。
油も問題ないです。
ただ油は高温になるので、油で揚げたら紙の上などに置いて油を少し吸わせてから盛り付けましょう。
このあたりは他の器と 同じです。
・熱い汁物でも 大丈夫?
汁椀があるくらいなので、熱い汁物ももちろん大丈夫です。
さすがに沸騰したてではなく、食べれる程度の熱さならまず大丈夫です。
気になる場合は、盛り付ける前に先にぬるま湯を入れます。
それで温度を馴染ませ、その後汁を入れると、急激に温度変化せず、漆器にも負担がかかりません。
何事も急激な変化はだめということですね。
・電子レンジは 使える?
基本的には漆器は 電子レンジでは使えません。
最近、電子レンジ対応の漆器も見かけるけれど、という声も頂きますが。
電子レンジ対応の漆器は、素材が特殊な樹脂製、 塗りも漆塗りではありません。
本来の木製漆塗りは、電子レンジ対応は難しいです。
別に温めたものを漆器に入れてお使いください。
・漆の匂いが するときは?
残念ながら、漆の匂いを取る特効薬はありません。
ぬるま湯で洗って風通しの良いところに置いておくと、匂いは抜けやすいです。
汁物などを入れるとまた匂いがする時もありますが、自然な漆の匂いなのでもちろん害もありません。
箱にしまい込まずに使って頂くと、自然と抜けていきます。
やはり使って頂くことが一番です。
・お正月の漆器「お重箱」(1)
実はお重箱は、コンパクトに お料理を盛り付けられる 機能性抜群の器。
「福が重なる」という お正月ならではの縁起物のアイテムでも あります。
年に1度でも使うことで乾燥を防ぐことにもなりますので、お手入れもかねて是非とも使って下さい。
お正月の雰囲気の演出にもぜひお重箱を。
・お正月の漆器「お重箱」(2)
今までよく使われた お重箱は 四角い18cmの三段重。
これで大体 3~4人前くらいに なるでしょうか?
ただ最近は もっと小さめの重箱も 人気があったり、 形も丸や小判型など サイズや形の バリエーションも さまざまです。
使うシーンに合わせて自由に選んで頂けます。
・お正月の漆器「お重箱」(3)
重箱を使われたあとの お手入れも 他の漆器と同じです。
中性洗剤を使って洗ってもOKですが、食洗器・乾燥機はNG。
少し気を付けるなら、特に四角い重箱は隅に水が溜まるので最後にしっかり拭き取りましょう。
乾燥を避ける意味でも あまりに仕舞い込んだり しない方がいいです。
お正月以外でも 是非お重箱を活躍させてください。
・椀と碗
「わん」と言っても 2つの漢字があるのを ご存じですか?
漆器は「椀」、 陶磁器は「碗」。
部首(偏)が 「木」と「石」。
それぞれの素材の違いを 漢字でも表しています。
一般的に、汁椀は漆器が多く 「椀」を、 茶碗は陶磁器が多く 「碗」 を使います。
漢字一つでも なかなか奥深いです。
・お椀の名前
漆器のお椀にも 多くの種類があります。
まずは蓋の有無で分けて、蓋のないものを「汁椀」、あるものを「吸物椀」 と考えるのが分かりやすいでしょう。
あとはサイズ・形状・用途で 名前が変わってきます。
例えば吸物椀より少し小さいと「小吸碗」、大きいと「雑煮椀」 と呼んだりします。
ある程度名前を覚えると イメージがしやすいかも。
材料の漆について
・そもそも 漆って 何ですか?
「漆」とは元々、うるしの木から採れる樹液からできています。
木に傷を付けると、その傷を復元しようと樹液が出てくるので、それを採取します。
何年も育てた うるしの木から採取できる漆の量は200cc程度です。
・漆はどこで採れる?
日本で使われる漆の95%以上が中国産。
日本産もありますが、貴重で価格も高く、主に神社仏閣の補修に使われます。
一般的な漆器には ほぼ中国産の漆を 使います。
日本に輸入された後、使いやすく 品質が安定するよう、漆商が精製します。
井助もそんな漆商として、190年前に創業しました。
・漆はなぜ必要?
漆はその艶や光沢、 色合いや絵柄など、見た目に注目されます。
美しく彩るという「意匠性」は、漆を使う理由の1つです。
ただ漆には、素材の木を保護する、という大きな役割 があります。
漆を塗らないと木目から水が浸透してすぐに劣化したり、少しの衝撃で割れたりします。
漆の木の樹液で木を守る、昔からの知恵の結晶です。
・漆はもともと何色?
漆は うるしの木から 採れる樹液ですが、 採取された樹液は乳白色です。
「カフェオレ色」なんておしゃれに 言われたりもします。
その生の樹液を 精製して実際に使用する漆 となりますが、その色合いは半透明の茶褐色(飴色) という感じです。
「半透明」&「飴色」、これが漆の独自性を生み出します
・漆の黒はどうやって作る?
漆の黒は何か黒いものを 漆に混ぜて作るのではありません。
漆の精製時に 鉄粉を入れて 酸化作用により 漆を黒くしたものです。
ですから、他のどんな黒とは違う漆独特の深みのある黒が出来上がるのです。
「漆黒」という言葉も そういう独特の黒を 表したものでしょう。
一口に黒と言っても いろいろあるんですね。
・漆にはいろいろな色があるの?
漆は黒以外でも 顔料を混ぜることで いろいろな色を 作ることができます。
但し元の漆が 茶色っぽいので、作れる色にも 限りがあります。
例えば、白漆は元の茶色に白の顔料を 混ぜて作りますが クリーム色みたいです。
それでも漆器の世界では 「白漆」と呼びます。
パステル調の淡い色は 漆では難しいですね。
・うるしの漢字
「うるし」の漢字は 「漆」 部首(偏)は 水を表す「さんずい」。
少し意外ですが、漆が樹液で、液体であることで納得できます。
そして右部分には 「木」が含まれています。
これで漆が樹液、つまり「木から採れる液体」であることが分かります。
漢字だけでも 漆への理解が進みますんね。
漆器の塗りについて
・漆塗りの種類(1) 拭き漆
漆の塗り方で 最もシンプルな塗りが 拭き漆(ふきうるし)。
布や刷毛を使い、生の漆に近い「生漆(きうるし)」を 木目に摺りこむように 塗りこみます。
なので別名、摺り漆 。
木目に漆が浸み込むことで 防水の役目を果たします。
また木目を鮮やかに 浮かび上がらせて、木地の美しさを 引き立てるのです。
木地と漆の一体感が 楽しめる塗りです。
・漆塗りの種類(2) 溜塗り
代表的な漆の塗り方の溜塗り(ためぬり)。
下に朱の漆を塗り、その上に半透明の透き漆(すきうるし)を 塗ることで独特の色合いを 表現します。
塗った当初は 黒に近い印象ですが、時間が経つと上の漆の透明度が増して 徐々に下の赤い漆が 主張してきます。
半透明の漆の性質や経年変化を利用した見事な表現方法です。
溜塗りで漆の美しさを 体感ください。
・漆塗りの種類(3) 白檀塗り
最近とても人気の白檀塗り(びゃくだんぬり)。
金箔や銀箔、金銀の蒔絵の上に 半透明の漆を塗ることで、飴色のような色合いを 表現する塗り方です。
金銀の風合いと半透明の漆の色合いを 重ねることで 単一のものでは表せない 奥深さが感じられます。
現代の生活空間にも 違和感ない美しさです。
ちなみに白檀塗りの名前の由来は諸説あり。
・漆塗りの種類(4) 根来塗り
根来は「ねごろ」 と読みます。
下地に黒、上に朱色を塗り、朱色を研いで下の黒を ランダムに見せます。
シンプルながら 1つずつ黒の出方が違って 面白いです。
元々、和歌山の根来寺で始まった塗り方と言われています。。
一説には朱塗りのお盆を 僧侶が毎日磨いていたら 偶然、下の黒が出てきて 広まったとか。
漆と日常の暮らしが 結びついた逸話ですね。
・漆塗りの種類(5) 曙塗り
曙(あけぼの)塗りは下に朱、上に黒を塗り、黒を研いで下の朱を ランダムに見せます。
お気付きかと思いますが、色合いが根来塗りの 真逆になっています。
おそらく 根来塗りが普及した時、誰かが逆を試したのでは、と想像します。
黒に朱が見える塗りを 明け方に光が射す 「曙」と名付けたのは言いえて妙ですね。
塗りの発展にも 歴史があるようです。